1970年代に放送されていた社会派ドラマ「大都会」というシリーズがある。渡哲也と石原裕次郎が主演だった。警察と、新聞社と、それぞれの立場から事件が描かれていた。脚本は倉本聰が担当していたと思う。
子供が見る番組ではなかったはずだが、当時ちょうどその第一シーズンが、学校から帰宅する夕方4時ころに再放送されていた。そのときに偶然見て衝撃的だったのが、第8話「俺の愛した ちあき・なおみ」である。歌手のちあきなおみ本人が出るわけではなく、歌がうまい少女が北海道から出てきて東京でのデビューを目指している話で、得意の歌がちあきなおみの「喝采」。だが少女は女衒のような芸能関係者の男によって有名作曲家の元に送り込まれ、性的な関係を結ばされてしまう。
ショックのあまり、その女衒に詰め寄ったときに、彼女は男を殺してしまう。
一部の人にだけ打ち明けたが——自分が出られることになったテレビ番組の生放送で、彼女は「喝采」が流れるなか、歌の代わりに話をしようとする。テレビスタッフの手により無残にも音声は切られ、「喝采」の音楽のみが流れるというラスト。
少女歌手を演じたのは、高橋洋子だった。いまも鮮明に覚えている。
この数年で芸能界がらみで見聞きした話を考えると、50年近く経とうが、倉本聰の描いた世界はまだほとんど変わっていないのではないかと思えてしまう。
(この「大都会」シリーズは、2025年1月現在U-Nextで見られる)