わたし自身はユッケを食べたことがない。ユッケジャンクッパの肉は加熱した状態で供されるので生ではない。生肉で食べたことがあるのは、馬刺しくらいだろうか。
数日前から、同じ焼き肉チェーン店の複数の店舗で食中毒(腸管出血性大腸菌O111ほかを検出)が起きたニュースが流れており、残念なことに男児2名と女性1名がお亡くなりになった。また、多数の方が入院されているという。
(心よりお見舞い申し上げます)
ニュース映像では、たびたび記者会見などで顔を見せる焼き肉店親会社の社長が有名になってしまったが、その後の報道を注意深く見ていると、菌は店に運ばれる前の段階で付着しており、切り分けて各店に運ばれた段階ですでに「生で食べる以上は」食中毒が避けられない状態になっていたことがはっきりした。
つまり、店の管理がどうのこうのではなく、生で食べるという前提ならば、もはや集団食中毒は避けられない状態だったわけだが、加熱すれば菌は死ぬわけであるから、焼き肉など加熱調理した場合は、この件が発覚しなかった可能性がある。
その焼き肉店に肉を卸していた会社が「生食にする」とどの程度まで承知していたのか。そして承知していた場合は、加熱用の肉とまったく同じ衛生状態で管理していたのか、あるいは特別な手順を踏んだのか。
焼き肉店の側は、買ったものを一度も疑わずに菌の検査をせず、菌が付着しやすい肉の周辺のそぎ落としもおこなわなかったようだが、いったいどういう認識でいたのか。
日本の市場では、旧厚生省が定めた基準にのっとり生食用として流通した牛肉は、少なくともこの数年においては、記録がないそうである。世の中の焼き肉店でユッケとして供されてきた生肉は、つまりすべてが卸元もしくは焼き肉店舗の自主的な管理下にある、ということだ。
今回の件に関し、業界や行政の側でそれぞれに努力はなされるだろうが、それまでのあいだ、そしてそのあとも、消費者はまず「最終的にリスクを負うのは自分や家族」という認識で情報収集し、より注意深く行動することが求められる。