このところの円安は、じわじわならともかく、唐突すぎて困る。
しかも誰も歯止めをかけないどころか、いいことであるかのように、浮かれている印象…。製造業にとっていいことだというニュースが、連日のようにテレビで流されていたのは先週くらいまでだっただろうか。とにかく頻繁に目にした。だがちょっと待ってくれ。製造業だけ喜べば、それでいいのか?
日本は、何でもかんでも輸入している国である。製造業にがんばってもらえれば、それはなんだか威勢のよい話に聞こえるし、日本から製品が外に出て行くというのは、誇らしい気分になるだろう。だが、輸入する際のコストが仮に10%増しになったら、どうなる?
わたしはドイツやオーストリアからバウムクーヘンを買うことがあるが、ユーロは晩秋まで105円〜107円くらいで予測しておけば問題なかった。現在は125円以上だ。200ユーロのものを買ったら4000円以上の値上げになる。個人ならならせいぜいこんなものだが、企業の取引で、千倍の単位で考えたら、それは大きな痛手となるだろう。
さらに身近なところでは、ガソリン、灯油なども、深刻ではないかと思う。
この急激な円安、楽観視している場合ではないし、よその国に出かけていって「なんとかミクス」だとかニコニコしているのは、見ていてちょっと不快な気分だった。
目に見えるブツ(生産品)を買ってもらって黒字を出そうなどと、それが景気がよいことだなどと、そんな考えは古いものとしてあきらめて、従来の業種と同等に、サービスや情報テクノロジー、科学/化学分野なども含めて、総合的に勝負していかないければならない。いまからでは遅すぎるほど。
日本からの頭脳流出はとまらない。目に見えない「アタマ(知識)」と「やる気」に、行政や政治家は補助金や資金を出さないから、人はどんどんと外に流れていってしまう。iPS細胞の山中教授のような存在が日本の研究機関に名を連ねるのは(もちろんアメリカにも生活基盤があるはずだが)、今後ますます希有なこととなってしまうだろう。
話を広げてしまったが、とにかく、この円安は急激すぎて、今後どういう方向に動くのか(そしていつなのか)も見えにくいところに、不安を感じる。