埼玉新聞を見てびっくり。まったく役人とか、役人に呼ばれた「有識者」というのは、とんでもないことを思いつくものだ。
2014.06.30 埼玉新聞 → 病棟転換住居に反対高まる さいたまの男性「地域で暮らす今幸せ」
厚生労働省の有識者検討会で浮上した精神科病院の病棟を退院患者の居住施設に転換する構想に対して、反対の声が全国的に高まっている。7月1日に開かれる有識者検討会が結論をまとめるとしており、長期入院を体験した元患者も黙ってはいられない。
なんでこんな奇抜なことをと思ったら、最後に
> やどかりの里常務理事の増田一世さんは、今回の構想の背景に、つくり過ぎた病床の問題があると指摘する。
ああ、わかる、わかる。こういう発想をするものなのだ、役所は。なんたることだろう。
精神病院(もしくは病院の精神病棟)というのは、とかく入院が長引きやすい。患者が自分や他者の身体に危害を加えるような直接的な危険性が去ったのちも、支援してくれる周囲の協力があれば別だが、なかなか退院の判断とならない場合がある。長引けば長引くだけ、外の世界が怖く感じてしまい、ますます病院に閉じこもる患者もいるかもしれない。
わたしはこの点に関し、自分が偉そうなことを書ける人間ではないと自覚しているが(精神病の患者をすすんで個人として支援できるか、一般論やきれいごとではなく、できるのかと聞かれたら…わたしにはわからない)、だからといって、長期入院をした人にそこをそのまま仮住居にいかがですかと提案するのは、あまりに人間として、はしたないことではないか。自分の意思では出られない鍵のかかった空間に何年も暮らした人が、同じ建物にそのまま暮らせと言われて、はいそうですかとうなずくだろうか。
そもそも長期入院に持ちこませず、軽いうちに薬やカウンセリングで症状を軽いままに抑えていけたら、そして入院した場合でも気軽に通院をつづけられる土壌があったら、今後はこういった問題で苦しむ人も減ると思う…だが、それはまだまだ先の話だろうし、現在のところは理想に過ぎない。
この問題は、行き先や引き取り手がないため刑期ギリギリまで刑務所に残らざるをえない障害を持つ受刑者や、かつて何十年も強制的に収容生活を送らされたハンセン病患者らの問題と同様に、人の尊厳にかかわる重大な事案である。けして急いで決めてはならない。
一度何かが決まると、撤回はほんとうに難しい。慎重な検討をお願いしたい。