年末年始のスカパーの映画ラインナップを見ていると、けっこう豪華である。知らない映画もけっこうある。懐かしい物もある。
映画と言えば、とくにホラー映画は、かなり好きなほうだ。レンタルビデオも家庭用のテレビ録画もない時代から映画は好きで、東京12チャンネルで昼間にやっていたような大幅カットの吹き替え版やら、夜の時間帯の映画まで、けっこう見ていた。親とキョウダイの都合でふたつしかなかったテレビはチャンネル争奪戦がすさまじかったが、わたしはどうにか、映画を見ていた。
おそらく最初に見たのはテレビでの放映だったと思うが、70年代後半の映画で「サスペリア」というものがある。ダリオ・アルジェントの監督および脚本で、ドイツのバレエ学校(寄宿舎)に留学したアメリカ女性の話である。到着したその日に半狂乱になった女性(バレエ学校の生徒)が中から飛び出してくる現場に遭遇した主人公。その晩のうちに女性がなくなったことをほどなく知る。そして、不吉で不可解な出来事の果てに、主人公はバレエ学校に巣くう邪悪な存在に気づき、対決する…
…と、あらすじはこうなのだが、実は笑えるポイント(しかもかなり重要エピソード)がある。まさか40年近く前の映画をネタバレしたと怒られることはないだろうが、いちおう、ネタバレ注意。問題ないとは思うが。
レッスン場も宿舎も兼ねている大きくて古風な建物が舞台なのだが、そこにあるとき、大量の(気持ち悪い系の)虫が落ちてくる。生徒らは悲鳴を上げてパニック。ところがこれ、怪奇現象でもなんでもなくて、屋根裏に保管していた備蓄の食べ物が腐ってウジがわいたという話。学校をとり仕切るマダムは「業者に掃除をさせるまで、全員が広いレッスン室に寝泊まりします」と宣言。そして日本で言えば体育館のような場所にカーテンをたくさんつけて、教師も生徒もみんなが休む…という話になった。
その現場(体育館みたいなところ)に、みんなが寝ていると、奇妙な寝息が聞こえてくる…何を隠そう、学校に巣くう邪悪な存在(見た目は大きめサイズのばあちゃん)が「みんなと一緒にウジ虫を避けて体育館に寝泊まりしている」という話なのだ。
ありえん、ありえん、ウジ虫に負ける邪悪なばあちゃん!? 怖くないじゃん、それっ。
そのシーンから先、わたしのサスペリアを見る目がまったく変わってしまったことは、言うまでもない。だが悲しいかな「ここが笑えるシーンである」と強調して書いている人、実際に笑っている人を、ほとんどお見かけしない。一緒に笑おう、ホラー映画ファンのみなさん。