サービスの程度が低い民泊や、いい加減な業者または個人が提供するスペースを「オリンピックを前にして宿がないよりは」とばかりに容認しかねない規制緩和は、提供される部屋または家屋の近所の住む人間への迷惑や、借りる人が被るかもしれない不利益のリスクが高いため、わたしは原則として反対である。かといって、この1年くらいですらよく聞く例として、急な出張や冠婚葬祭などのやむなき事情があるときに、観光客もしくは何らかの大口の予約が重なって一般人が気楽に宿も探せないという悩みが、増えてきたのは事実。人は着実に増えていて、宿は足りない。
今日、どこかのテレビ番組で、平日の夜は稼働率が低い「ラブホ」をリフォームして外国人家族に貸しているケースが紹介されていた。小さな子供が泡風呂に感動していたのは気分が複雑だったが、まぁ、衛生的にも法律的にも問題ないのであれば、どんどんリフォームしてもらっていいような気がする。ただし、ラブホというのは立地条件が「こてこて繁華街の裏通り」などが多いかもしれず、ちょっと小さい子はどうなのだろうという気もするが。
この件は何も2020年の東京オリンピックを考えた首都圏だけの話ではなく、たとえば災害のあとに復興のための要員(会社または個人)が連続して大量に宿を必要とすることもあるわけで、付け焼き刃で個人宅や業者をあてにするのではなく、普段から「緊急時にはすぐにでも宿として用途を変更できる何らかの施設または設備」というものに、ゆとりがあったほうがいいはずだ。
地方都市では子供が減って学校が統廃合になるケースが増え、その余った校舎をリフォームしてセミナーハウスなどに活用している例もあると聞く。多少は交通の便が悪くても、もっとも便利そうな駅や繁華街から送迎バスなどを手配できれば、緊急時には使えることと思う。
旅慣れている短期滞在者用には、いわゆるウィークリーマンションのようなものを増やすのもよいかと思う。慣れていない旅行者や、どうしても都心を好む利用者は仕方ないからホテルにでも泊まっていただくとして、多少は交通の便が悪いにしても(新宿など人気スポットまで電車で30分以上とか、乗り換えが多いとか、最寄り駅から徒歩15分とか)使い勝手がよくて備え付けの家具や食器などを使用してよい部屋があれば、そのほうが落ち着くという利用者もいるはずだ。
いずれにしても、一般の住宅街で、誰かが持ち家の一部を民泊にして自分たちは管理もせず旅行者に好きに使わせることがあるなら、想像するだけで、かなり気が滅入る話である。やはり「いかにも宿、いかにも宿泊施設」という場所と、一般の住宅街は、わけたままでいてもらいたい。あまりに「ゆるーい」規制緩和が起こらないことを、祈っている。