有楽町や日本橋界隈にはかなわないが、中野以西の中央線沿線にも、多少は地方のアンテナショップがある。たとえば高円寺には山形県飯豊町(いいでまち)の物産を扱う小規模な店があるが、このところランチなどの飲食に力を入れている気配がある。逆に、南口を出てすぐに去年の12月ころできた美瑛町のお総菜(コロッケなど)を扱うショップは、今年7月ころにはすでに退店していた。総菜販売で駅前の店舗を小さいながらも占有するとなれば、それほど儲かる「はずがない」。存続できるものでないとは、素人目にもあきらか。数ヶ月で撤退を決めたのは、正しいだろうと思う。
都内あちこちのアンテナショップを見てきて思う。地方自治体と連絡を取りながらも運営母体が民間企業であるなどした場合、かなり必死になって「ものを売ろう」としている姿勢が伝わってくるのだが、地方自治体という後ろ盾に寄りかかりすぎている運営者が「ゆるーく」やっている店というのは、そのだるーい雰囲気が伝わってきて、「地元のみなさん、税金ここでこんなふうに使われてるよー」と教えてあげたくなってしまうことがある。
東京人にものを売りたいと思うのならば、買わせる気にならないといけない。もし、なんとなく「東京に出てきている地元の人間が懐かしがって寄ってくれたらそれでいいし、自分の田舎も捨てたもんじゃないと思ってもらえれば」というのであれば、どちらに対しても(東京人にも出身者にも)失礼である。家賃が高く立地のよい場所にのんびり構え、損をしても現地の税金が使われるから安泰と思うならば、さっさと家賃が安い場所に移り、努力をおしまない店によい場所を譲っていただけるとありがたい。
正直なところ、地元の食材で料理をしている出身者など、うまくいっている事例を集めて、それらの店の隅に自治体の資料をおかせてもらったり、あるいは地元グッズなどの代理販売を頼めば、よほど話は楽になることと思う。使う税金を最小限にして、なおかつ成果を上げる方法を、真剣に考えておくべき時期は…実はとっくに過ぎていそうだが…、いまからでも、やらないよりはいいはずだ。