なぜだかわからないのだが、夢の中で猫を飼うことになったらしい。実生活では賃貸住宅で猫は飼えないが、夢の中では、なにやら熱弁をふるう中年カップルから、わたしは猫をもらったようだ。その男女は、界隈の捨てられた猫や不幸な猫をいったんひきとって清潔にし、お行儀を教え、人間の家に送り出すことを生きがいに思っているらしいのだが、なぜか、やたらと厳しい。猫をもらうには愛情があるだけではだめで、そのカップル(とくに男)の思うような手順を踏まなければいけないらしいことが、だんだんとわかってくる。
家に連れ帰ってきて数時間、わたしがまだ大丈夫だろうと思い、猫に「これがあなたのトイレですよ」と教えておくのが遅れたのだが、猫(ふわふわ丸い洋猫)がトイレを見つけられず、手前で床におもらしをしてしまった。わたしは「ごめんね、教えておかなくて。ここだったんだ(トイレを指さしながら)けれど、次からここでトイレしようね」と話しかけながら、床を拭いていた。
その直後、シーンが変わる。
猫をもらって帰ったら翌日に「ちゃんと育てているか」を報告に行かなければならない話になっていたのだが、必要ないだろうけれどいちおう行ってみるかと、出かけた。するとその家に着くかどうかで、男がわたしに金切り声を上げている。猫ちゃんのトイレが間に合わなかったことや、家に着いてからトイレの事件までの数時間、自分が指示したように「帰宅直後は1から10まで手取り足取り、今後の生活について語り尽くせ」を実行していなかったことなど、それらぜんぶを(なんと実生活では他界して21年の)わたしの父から、電話報告を受けているという。そんな人(わたし)に猫は預けられないから、昨日の猫を帰せと。
死んでかなり経つ父が電話したという設定の夢に、少なからず面くらうわたし。だがその謎について考えている暇はなかった。
わたしは男に反論。生き物というのは、そんな簡単にやりとりするものじゃない、だいたい、家に着いてすぐにのんびり自由にさせることのほうが、1から10まで今後についてしゃべり倒すのよりはるかにまともではないかと言ったのだが、相手はどこ吹く風。さらに男は別の「雰囲気がまったく違う猫」を出してきて「こっちをお試し飼いにして、昨日の子はダメ」と言い張る。納得がいかない。なんだこの人。
わたしは怒っているのだが、夢の中で家族が「この子(別の猫)も可愛いし、連れて帰ろう」と、ことを丸く収めようとしてしまう。いや、違う、そうじゃないんだ、わたしの言いたいことは…と、わたしは力説しようとするのだが、誰にも伝わらない。
すると、相手の男がふと表情を変えた。ことが問題なく進んだらわたしから何か(地方特産品の果物みたいなもの)をもらおうとしていたようだが、その詳細を思い出したらしい。わかっているのは、話がこじれるとそれはもらえない、でもほしい、いやいや、いまさらトーンを下げられないぞと、男の表情がめまぐるしく変わっていく。
わたしはその表情を見て「物がほしいあまりに自分の意見を変えるかどうか考えている、どーしょもない人」と思った。そこで目が覚めた。
とりあえず、いまのところ、猫を飼う予定はない。