ロイターの記事を読んでいて、西アフリカのブルキナファソが2008年から実施していた試験的な遺伝子組み換えの綿花栽培が「量か品質か」の典型的な事例となって、モンサント社と現地農家らとのあいだで大きな問題になっていることを知った。
2017.12.08 → Reuters How Monsanto’s GM cotton sowed trouble in Africa
高品質の綿花栽培で知られていたブルキナファソは、2000年ころに害虫被害に悩まされていた。見つけて殺虫剤に浸けてもすいすい泳ぐような幼虫を前に、お手上げ状態だったという。話し合いののち、ブルキナファソに従来からある品種に害虫への耐性を持たせる遺伝子組み換え技術を施すという前提のもと、現地の一般農家がモンサント社の種子を導入したのが2008年。そして2015年までのあいだに、導入する農家は増え続け、全体の75%にまでなった。
害虫への耐性効果はたちどころに現れ、生産性は上がった。だが大きな問題として、品質が下がった。モンサント社の綿花における遺伝子組み換え技術はアメリカで開発され世界的に普及していたが、当初の約束であったはずの、ブルキナファソの品種に当てはめた改良はおこなわれなかった。抗議に対し、2015年にモンサント社から、品質向上がなくともほかのよい面により相殺されているはずとの回答があったという。
栽培者側にしてみれば、品質は譲れないので遺伝子組み換えをあきらめるしかないけれども、今後の栽培方針や生じてくる金銭的な問題など(新たな投資やノウハウの周知、手間も含めて考えれば)、この問題はかなり大きなしこりになりそうである。高品質な綿花が苦労なく生産できると考えていた現地農家の方々には、お気の毒としかいいようがない。
モンサント社の種子導入を橋渡しした農学者から、受け入れ体制(国や栽培農家の技術面も含め)をもっと整えておく必要があったことも事実であるとのコメントもあるいっぽうで、問題はモンサント社の遺伝子改良がお粗末だったことに起因しているとする国内外の専門家の意見もあるとのこと。
品種改良、遺伝子組み替えなどの技術では、結果が翌月にわかるようなことはまずなく、早くても1年後、普通は数年後である。最初に導入したときは試験的な意味合いだったかもしれないが、周囲がわれもわれもと導入して、気づいたときには迅速な見直しや方向転換が難しくなってしまったことは、想像に難くない。
こうした問題は、今後も、どこの国でも起こる可能性がある。遺伝子組み換えと聞くと別の方向で(安全かどうかなどで)話が賑わってしまうかもしれないが、仮に別の技術であろうと、人は期待した通りに物事が動かなかったときにすぐ立ち止まれないことがあるのは事実だからだ。もう少し期待してみよう、せっかく手間やカネをかけたのだから待ってみようという気持ちが働くのだろう。
ブルキナファソの方々が今後ふたたび高品質の綿花が栽培できることを、遠く離れた日本から応援している。