少ない商品数でそれだけをひたすら販売するビジネスというのは、もし当たった場合はよいのだが、そうでない場合は数か月で撤退ということにもなりかねず、かなりきわどい賭けになるように思う。
30年近く前だが、都内のあちこちに500円チーズケーキの店ができた。高円寺北口の細い商店街にもあった。わたしの記憶では1種類しか販売していなかったと思う。作って間もない時間で販売されていたのか、まだぬくもりがあったか、あるいは常温での販売だった。作ってから冷やして売るタイプの商品ではなかった。
職場に一度買っていったら好評で、そのうちまたと言われたが、そうこうするうちに店がなくなった。そして都内のほかの場所でも、そういった店を見なくなった。1品に頼るのは、商売としては難しいところだろう。
さて、いま「食パンだけ」など、種類がほんとうに少ない状態でひたすら売る店の噂を耳にする。たとえば銀座で行列が絶えないセントルザベーカリーは食パン3種類だと聞く。そして何十年も前から話題の浅草「ペリカン」もまた、食パンとロールパンの2種類にサイズのバリエーションが少しあるらしいと聞くのみで、ほかのパンはないとのこと。さらに先日などは「クロワッサン専門店ができたらしい」とネットで読んだが、そこは2種類のみだそうである。
食パンは、まずくなければだが、人は買う。朝をパン食と決めている人も多いであろうし、味がよくて立ち寄りやすい店であれば、ヒットするだろう。だがチーズケーキやクロワッサンで取り扱いのラインナップが少ない店は、どうしても商品が嗜好品であるとの扱いを受けがちであり、客に飽きられたら最後というリスクがあるのではないだろうか。立地や予想される客層などを吟味の上、つねに新しい人が買い求める可能性のある場所に店を出すことになるだろうが、場所がよければ家賃も跳ね上がり、かといって少ない品目では価格調整もなかなか思うようにいくまい。
そういえばメロンパン販売も全国に多く存在するだろうが、メロンパンの場合は○○メロンパンのような名前で種類を作れることと、形を変えたりすることで、工夫できる可能性があるのだろうか。野方のアルテリアベーカリーは数か月前に閉じ、近く高円寺北口に出店予定のようだが、どうなることやら、遠巻きにお手並みを拝見するとしよう(^o^)。
食パン専門店は、まずくなければ生き残れる可能性があるが、嗜好品は確実に「美味くなければ立ちゆかない」。がんばっていただきたいとは思うが…シンプルなものを少ない品目で販売する場合には、商品の特徴をどう出していくかがつねに鍵になるだろう。
さて、明日はわたしもひさびさにクロワッサンを焼こうと思っている。うまくいったら画像を(姉妹ブログ「食べる日々」のほうに)掲載予定。