俳優のショーン・コネリー氏が滞在先のバハマで死去と、ご家族が発表されたとのこと。日時や死因などは不明。謹んでご冥福をお祈りする。
いろいろな方々が、それぞれに氏の出演作について語っていくことになるだろうが、わたしはひとつ、風変わりなものを。
わたしがよく覚えているのは、1964年の「わらの女」である。
原作はカトリーヌ・アルレー。80年代くらいまでは飛ぶ鳥を落とす勢いのフランス人作家だった。
名作「わらの女」の結末に打ちひしがれて「こんな話(終わり方)があっていいのか」と考えていたころ、たまたまテレビで映画版が放送されたのだ。
そのころは007シリーズもさほど詳しくなく、ショーン・コネリーをただ影のあるイメージの強い役者さんだなと、ぼーっとテレビ画面を見ていた。
ところが最後の最後で、原作を読んだとき以上の衝撃が。
唖然…。
原作のラストの衝撃と、絶望感が、映画ではまったく違うものに変更されていた。
あれを、ふつーの映画風にまとめたら、まったく「わらの女」ではないのだが。
原作を知らない人ならば、それでも面白いかもしれないが、知っている人には衝撃だ。おそらく「あんな絶望を観客に味わわせることはできない、お金をはらって来てもらうのだし」とでも、誰か考えたのだろう。そうして変更されたであろう内容は安易で、安っぽさが感じられた。
名作は凡作になってしまったが、あれが、当時の映画界の限界だったのかもしれない。