かつて、フレドリック・ブラウン(日本語Wikipedia)というアメリカの小説家がいた。短編の名手で、日本語にもたくさん翻訳紹介されている。わたしも遅ればせながら90年代になって、かなり読んだ。
有名な作品のひとつに「火星人ゴーホーム」がある。原題はそのまま “Martians, Go Home” だ。
地球に迷惑な火星人が大挙してくる。言葉という武器で各地の地球人に嫌がらせし、どこにでも出没して不快なことを言うものだから、みんなおかしくなってしまう。地球上のそれぞれの人たちが「出ていってほしい」と考え、政治的な解決を計ろうとするもの、機材で撃退しようと考えるもの、祈祷で退散させようとするものなど、さまざまな試みがなされる。
ところが、火星人はどれも関係なく存在しつづけた。
そして最後に、来たときと同じくらいの唐突さで去っていく。
地球上のほとんどすべての人たちには、来た理由も去った理由もわからなかった。
だがその後、人は「自分のやったことが効果があった」と思うのである。読者は思わず「そんな祈祷が関係あったんかいっ!?」と総ツッコミするわけだ。
コロナ禍について考えるとき、この火星人話を思い出す。
なぜ日本でいま患者が激減しているのか。11月になり、ヨーロッパではふたたび猛威をふるっているようだが、まだ日本は患者が少ない。東京の1日の陽性者発表は20人前後がつづいている。
(もちろん全員が検査を受けているわけではないから、潜在的に感染している人が多いかどうかは不明であるが)
このあとすぐヨーロッパのようになるのか、あるいは時期がずれるのか。
これからわかってくる、あるいはあとになってからやっとわかる「火星人が去る理由」が、どこかにあるはずだ。すでに「周期がある」とする説もある。だがその周期をもたらしているのは何なのか。
そうしたことがわかれば、飲食店営業に厳しく制限を設けなくても、娯楽を奪わなくても、ほかにできることが出てくるはずだ。
ぜひ、この「火星人の秘密」が、早くあきらかになってほしい。