カタカナで「アダルトチルドレン」というと、子供時代に家庭内で何らかのトラウマを体験して、それを精神的に引きずったまま大人になった人…という意味になるかと思うが、これをもしそのまま英語のスペルにして adult children と表現したら、成人しているが誰かにとっては子供であるので(親世代から見た)成人後の子供たち、という意味にしかならないように思う。
ちなみに、日本語のWikipediaで該当する欄によると、英語ではACOA(親がアルコール依存の家庭に育った) / または ACOD (家庭内が機能不全の環境で育った)という略称が紹介されているが、ざっと英語で検索してみた範囲では、略称ではほとんど何もヒットしなかった。スペリングできちんと説明しないと通じないのではないかと思われる。とくに後者のACODは、Dを機能不全(dysfunctional)ではなく離婚(divorce)の意味で使う人もいるようなので、略称だけでは混乱が生じるかもしれない。
日本語のネット上では、アダルトチルドレンという用語そのものは一時期より減った印象を受けるが、代わりに「毒親」やら、意味は多少大きくなるが「親ガチャ」などを、目にする機会が増えてきた。
狭い社会の中で「周囲に迷惑をかけない」、「はみださずに適度に生きる」を教えられ、目立たないことが無難であるとして横並びに育てられることが多い日本人だが、それだけに「暮らしや進路が選べなかった」という思いをいったん感じてしまったら、それをとことん言葉にして吐き出してしまいたい人がいるのではないか。それゆえ、アダルトチルドレン的な話題を好む(自分は他の人とは違いつらい子供時代を送ったとの思い)は、もしや「わりと日本的」ではないかと、わたしは考えている。