30年ほど前になるだろうか。バブルの終焉と、それが派手にはじけた直後をともにした同僚で、「1億円を貯める」と目標にしていた人がいた。
当時は普通の定期預金でも金利が3.5パーセントくらい、各銀行で工夫していた特殊な商品(たとえば第一勧銀の行員からは「スーパー定期」というものを勧められた)を数年間で契約すれば5%~6%くらいは貯まったような記憶がある。
当時わたしは趣味がパソコン通信くらいなものだったので、電話代だけ気にしていればよい生活だったから、出入りの第一勧銀さんに通帳を預け「これ、○○万円くらい、なんとかしておいてください」などと適当な頼み方をしたが、ほんとうに、適当になんとかしてくれた。最初の満期まではかなりの利息だったが……その後、定期を預けっぱなしで更新していてもまったく増えなくなり、ああ、時代は変わったなと思ったものだった。
さて、上述の「1億円貯める」の人だが、狙いはもちろん金利生活である。1億円を預金して、利息だけを普通預金に回して元金をそのままで定期預金として継続していけば、住むところさえなんとか確保できていればあとはそこそこの暮らしを金利でまかなえる、という狙いだった。
30年で仮に金利がさほど下がらなかったとしても、この半年くらいの物価上昇を考えると、あの元同僚はどうしているかと、懐かしく思いだしてしまう。それに家賃または不動産価格の上昇が青天井(とくに東京23区)。ため息もでない。