現物支給、クーポン配布…

 この国で過去に何度もあった「クーポン券配布」(紙の費用や各種手数料の発生、そして事務費、郵送料がかかるというのに)やら、今回の大阪府吉村知事のように「18歳以下の子がいる家庭で、子ひとりにつき10kgの米を支給」という話などを聞くにつけ、なぜ余計なところで金がかかるものを選びたがるのか、理解に苦しんでいる。

 金額の面からだけ考えても、米の運搬費用、それにまつわる事務費と人件費など、多額の手数料が飛んでいく。

 そしてまた「米だけあってどうするんだ」という話でもある。戦前の日本人の食生活では、成人はひとり1食につき茶碗3杯を食べていた(おかずは塩辛いものを中心に少しで、米飯で腹を満たしていた)という話も聞いたことがあるが、現代ではそれはない。米だけ食べる人はいない。米飯や米由来の食品(餅ほか)が好きなわが家であっても、全体的に計算したらおそらく小麦由来の食品(パン、麺類など)の消費量のほうが、超えているような気もする。

 さらにまた、日本人ではあまり多くないかもしれないが、米に対するアレルギーも存在する。当事者に選ばせもせずに、押しつけはどうなのだ。

 吉村知事の発想にあるのが「日本人なら米だろう」という、懐古主義。そして、大きなものを行政が配るという、ビジュアル的な意味での「がんばってる感の演出」ではないだろうか。

 現金がもっとも柔軟性が高いが、もし現金を配るのに行政として抵抗があるなら、ほとんどの家庭が払っている料金や税金を「○月分は不要」とするなど、できるだ手数料が生じずに人の手間もかからない方法を考えてもらいたい。

 クーポンや現物配布というのは、いわば、せっかく大きなソーラーパネルで発電し、蓄電したものを、すぐ使わずに中サイズのバッテリーに分け、さらにそこから個々人のモバイルバッテリーに小分けチャージしているような印象である。それぞれの場所で電池にロスが出て、個々人のバッテリーとして渡されてもすぐ使わなければ自然放電。とにかくもったいない話だ。

 手数料や事務負担を減らすことだけでも、まずは考えていくべきである。

投稿者: mikimaru

2021年現在「バウムの書」、「お菓子屋さん応援サイトmikimarche」などのサイト運営に、力を入れています。 かつててのひら怪談というシリーズに参加していたアマチュア物書き、いちおう製菓衛生師の資格を持っています。 バウムクーヘン関連や、昔からの知人には、「ちぇり」もしくは 「ちぇり/mikimaru」を名乗っています。