2020年の映画である。作中の言語としては主にドイツ語、主人公の母語としてフランス語も混じり、そしてなんと「架空の言語」が主役のごとく君臨する。それはユダヤ人ではなくペルシャ人であると偽って処刑を免れた主人公が、ペルシャ語を知りたいナチスの将校に毎日(架空の)言語を教え、後半部分では会話まで可能なレベルまで到達してしまうというものだ。
労働力としか思われていない囚人らと、実際の立場としてはその仲間でありながらも嘘がばれるまでのあいだは特別待遇として食料まで融通してもらえるようになる主人公。つねにおのが死を意識し、流れるように消えていく人々の死を見つつ、料理人として盛り付けの給仕をしながらひとりひとりの名前を尋ね、挨拶をする。そのくり返しが、なぜ言語を発明しつづけられたのかの謎を解き明かし、そして最後のシーンへとつながる。
出演者などはこちらのリンクを見ていただきたいのだが( → https://movie.kinocinema.jp/works/persianlessons/ )、嫌なドイツ人を演じさせたらピカイチの役者さん(近年では「すべての見えない光」に登場)と、作品を見るのは初めてかもしれないが、アルゼンチン出身でヨーロッパで活躍する役者さん。ふたりともまさに適役だった。
殴ったり、殺害があったりなど、目を背けたくなるシーンもあるのだが、これはぜひ多くの方に見ていただきたい。