数えたら20年くらいパンを焼いているような気がしてきた。たしか2004年くらいに買い替えたオーブンレンジでパンを焼きはじめ、その後まもなく製菓学校の通信教育(年に2回ほど1週間くらいずつ学校に行く)を開始したのではないかと思う。いまはその次に買ったオーブンレンジをメインに使っている。
これまでパンを焼く直前になって「今日はこのままだとうまくいかない」と気づいても、たいしてよい代替策が思い浮かばなかった。たとえばクロワッサンで失敗しそうな場合は容器に入れて焼いてしまうとか(——きちんと生地に巻き込めなかったバターが流れて天板がバター浸しになるのを防げるが、パンとしてはさほど美味しいものではなく、焼き型に溜まったバターはガーリックでも入れて固め直すしかない)、バター分が少ない生地であればピザにするか、あるいはフライパンでナンのように焼いてしまうか、といった程度の工夫である。
ところが今日、とんでもないアイディアが浮かんだ。
急いでいたので自家製酵母と市販酵母をブレンドして早く焼こうとしたからなのか、クロワッサン用の生地がゆるくなってしまった。バターのほうはある程度の硬さがあるため、やわらかすぎる生地ではバターと一緒にうまく伸ばせない。例を挙げるなら固形キャラメルを求肥でつつんで麺棒で伸ばせないのと同じ理屈と、思っていただけるだろうか。
だが家族がクロワッサンを楽しみにしていたので、どうにかしてがんばらねばと考えたあげく——
急いで外側の「皮」を作ることにした。幸いにも市販酵母がまだあったので、100g程度の強力粉と市販酵母を手で軽くこねてオーブンレンジの発酵機能で膨らませることに。市販酵母なのでおそらく休み休み1時間半も見ておけば膨らむだろうと、そのあいだにわたしは、やわらかくなってしまったパン生地と、中に巻きこむはずだが硬さが合わないバターとをポリ袋に入れて、ひたすら手で揉んだ。
つまり、バターをパン生地にきれいに折りこむのが無理であれば、パン生地そのものにバターを練りこんで、それをバター生地として別のパン生地で(まんじゅうのように)つつんでのしてしまえばいいと考えたのだ。
これまで市販酵母をあまり家に買っていなかったせいか、いままではこんなことを考えつきもしなかった——自家製酵母はこねてから1日くらい低温状態や冷蔵庫で放置することもあるので、急に作戦変更をしようにも皮部分が作れないのだ。たまたま手元に少し市販酵母があったので、どうにか今日中にクロワッサンが完成した。
見た目はいまひとつだが、味と香りはわりとよいクロワッサンが焼けた。いつもは前日の夜にこねて冷蔵庫に休ませてからバターを折りこむが、今回は当日の昼にこねて夜の8時過ぎには完成した。間に合ってよかった。
20年もパンを焼いているのであれば、もっとうまい失敗回避策が思いつくものなのかもしれないが、今回は何とか大失敗を回避してそこそこのクロワッサンができたので、よしとしよう。