今日は、ちょっとしたことがあった。
人の縁とは、さまざまな事象が薄い衣のように折り重なり、そこに人と人との思いが織りなす機微が味わいと香りをもたらして、儚いように見えつつもどこか強靱な面を持ち……などと格好を付けて書いている場合ではない。何かが壊れるときは、とことんあっという間なのだ。そしてそれをつなぎ止めるか、とことん壊すのかも、また人の心。
品のないことを書いてしまうが、今日の出来事については薄い衣も機微もへったくれもなく、大風が吹いただけで、その内側から別のものが出てきたという話だった。自分が安心して心のよりどころとしていた場所が、実は思っていたものとは違うのかもと、存在価値が揺らいだ。
あえてぼかして書くが、わたしがずっとたいせつに思っていたある場所において、普段から考えればあまりにも異質なものが投稿されたのである。
それはわたしにはあり得ないほど異世界の展開で(たとえるならば、日々利用する普通の公園にやってきたら、いきなり中央の地下から舞台がせり出してきて演歌歌手が出てきたかのような驚きであり、それがいまにも歌いそうでどうしたらいいのかの展開)——しばらくは体が硬直して、どう反応していいのかわからなかった。
(この先、演歌歌手のたとえで書いていく)
その、例えるならば演歌歌手に、わたしはできるだけ反応せずに様子を見ていたが、だんだんと「なんで急にこういう展開。ぜんぜん聞いてないし」という思いが、こらえきれなくなってきた。だがタイミングを逸したのでどう切り出したらいいのかがわからない。すると、わたしなどとは違ってとても正直な人が「あの歌手、誰ですか、何してるんですか」と、はっきりと声に出してくれたのである。
そこでわたしと何人かが、勇気を出して(目の前なのでどう考えてもその当事者には聞こえてしまうのだが)少しでも意見を出そうかと前に一歩出たところ、その演歌歌手のうしろからマネージャーが出てきて「何か問題がありましたか」と、尋ねてくれた。
そこで気持ちを落ち着けつつ、だが思いきって正直に、突然すぎて何が何やらわからないということと、しかもなぜこの静かな公園で突然に演歌歌手が歌いそうなのかという話をした。
こちらの思いをわかっていただけて、ひとまず演歌歌手は帰ることになった。
どっと、疲れた。
最初に迫力負けしてタイミングを逸してしまったため、いろいろなことを考えた。今回は我慢できても、次に演歌歌手がやって来るなら、おそらく気持ちが持たない、だから何も言わずにこの公園を使うのをやめようか——というのが、第一の選択肢として頭をよぎった。だがそれでは、たまにすれ違っていた顔なじみさんたちとも会えなくなる。どうしたものか、と。
誰か数名だけにでも自分の気持ちを伝えておかねばと、最初にひとり連絡をとったとき、上述の例で書くならマネージャーさんが登場したのだ。このちょっとしたタイミングが功を奏して、わたしはひとまずその公園を去らずに済んだ。
とりあえず今日のところは、気持ちも居場所も無事だった。心の平安がつづくことを祈っている。