わたしはドライフルーツや季節の果物を水に浸けてパン酵母を作っているが、麹についてはわからないことだらけだ。
家の中できれいに瓶を洗ってきれいな水と何か材料入れて蓋をしておけば発酵するという、そういう普段のパン酵母は、原料になった何か(たとえばドライフルーツ)が水と空気に触れて発酵しているのである。だが麹菌とは、どこかにある自然な菌で、それは何かにくっついて白っぽくなった段階で「あー、麹菌ここにいたっ」となるのである。麹菌がありそうな場所に水分のある何か(たとえば炊いたごはん)などを置いておくと、そこに麹菌があればだが、白っぽくなり、その菌を持ち帰って培養して増やす。
だが、増やすにも限度があるだろう。よほどの注意をしなければ、いつか劣化するはずだ。日本の自然の中にはまだ麹菌を取りに行ける場所があるだろうが、いつかそれが取りに行けなくなるほど環境が汚染されたら、麹を使った食文化というものも危機に瀕してしまう。
これは以前に北海道の大手菓子店(バターサンドだけでなく冷凍食品やあんぱんなど、幅広く展開している)のホームページに書いてあったことだが、社員さんが炊きたてのごはんを山奥に持っていって、山肌に広げたシートにうっすらとごはんを置いて、菌が付くのを待つ、そしてそれをパン種にすると書かれていた(現在その記事はないはずなので、いちおう某大手菓子店と書かせていただく)。わたしはそれを読んでえらく感動したものだった。
さて、これをお読みのみなさんは、一般の住宅でただ炊いたごはんを放置していれば麹菌が付くと考えてはならない。間違いなく麹以外の何かが反応する。どうしても発酵の実験を楽しみたい場合は、きれいな容器にぬくもりがある状態のライスと麹菌の付いている米(つまり米麹)、適量の水を入れて、楽しんでみたらいかがだろうか。