以前に概念として理解していたのは、各人が自分の事情やライフスタイルに合わせた労働時間を選択できたり、長時間の残業が常態化したりしないように、働き方を考えていくもの、それが働き方改革だと思っていた。
だが最近、どの業界(小売業や医療など)でも感じるのは「世の中の多くの人を9時5時に当てはめる」という、利用者にとってはちょっと不親切なものではないかと感じている。もちろんそれは理念と解釈が違っているからなのかもしれないし、あるいは実行委移す側の業界がのっぴきならない事情をかかえている可能性もある。一概に誰がいい悪いとは言えない。
たとえば、スーパーなどで昼間の時間帯にすべての惣菜や弁当類を作ってしまい、夕方にほぼそれら手作り品が売り切れてしまう場合でも、店は設定された閉店時間まで営業している店をいくつか知っている。夕方に調理スタッフにたくさん調理をさせてはその人たちが定時に帰れないということなのかもしれないが、店が夜遅くまであいている以上は多少の分量を夕方に作り足しても売れる可能性はけっこうあるはずだし、需要もあるのではないかと思う。
これにはもちろん、管理職クラスの人間の数がシフトで交代できるほど揃っておらず、現場の調理スタッフらがシフト制になれば見届ける管理スタッフが朝から夜遅くまで働かなければならなくなることも懸念されるからかもしれない。少しでも早く従業員を帰らせて管理部門の負担を減らすのだ、と。そのあたりは店の事情であるし、客であるわたしにはわからない。
医療機関でも、以前ならそこそこの機材を入れていて自前で検査をしていたクリニックや病院が、最近では昔にもどってしまったかのような話を聞く。午後に手間のかかる検査を入れると(夕方以降まで検査スタッフが作業を継続しなければならなくなるので)、検体を持ち出して取引先で検査してもらうことにする、だから数日後に結果を聞きに来てください——という事例だ。
別に何が何でもその日のうちに調べてくださいというのではないが、そういった説明の際に当事者らから「働き方改革なんですよ」という言葉が聞かれることがしばしばあり、その言葉にしばられすぎているのではないかと、つい考えてしまう。
改革をしようとするとどうしても職場全体を(9時5時のような)定時の枠に収める話になってしまうのであれば、営業時間が「12時-20時」の店があってもいいし、朝7時から午後3時の店があってもいいと思う。病院も夕方「だけ」開く病院があってもよさそうに思うし、早朝だけのものがあってもよさそうだ。
全員が揃って9時5時のような定時の枠にとらわれる必要がないのが、ほんとうの意味での「よい働き方」ではないだろうか。