幕末から明治にかけて日本で長く外交官をしていたイギリス人(先祖にはドイツ人も含む)アーネスト・サトウ氏だが、わたしも最初は佐藤さんと関係があるのかと思っていた。
だがよく考えると、昭和ならいざしらず幕末に日系の名字を持つイギリス人がいるとは思えなかった。たいていの場合、どこの国でも父方の名字を引き継ぐことが多いため、日系の父がイギリスで結婚して子をなしたあとでその子供が日本に大使としてやってくるには、幕末より数十年早くにイギリスで現地人同様の暮らしをして教養も高かった日本人がいることになってしまう。
もうひとつの可能性としては日本に長くいて通称としてサトウさんを名乗ったのかと思ったが、スペリングは Satow さんであった。そこで検索してみると、ドイツの低地ザクセンと呼ばれるあたりに、Satowさんという名字はあるらしい。
で、なぜ急にサトウさんの話かというと、餅を食べたり餅を見るたびに思い出すのだ。
東京新聞かどこかで、Ernest Satow さんが書き残した文章に、日本の雑煮には「揚げた餅」がはいっているという表現があったのだが、わたしがネットで調べたところ原文は fried mochi だった。それはさすがに「焼いた餅」と訳すべきだろうと、その新聞社にメールを差し上げたが、思いっきり無視された過去があるのである。
Fry は、日本人が思う「揚げる」だけではなく、炒めたり、焼いたりするときにも使われる。検索してみたところこのブログでも書いていたが、外国人が日本の九州で fried sweet potatoes を食べたとニューヨークタイムズが書いていたのだが、気軽に立ち寄れる軽食の屋台であるらしいので、おそらくは大学芋(フライパンで焼いてとろみと照りをつけている)かと思う。揚げ物のようなディープフライだけが英語のfryではない。
で、餅を見るたび「アーネスト・サトウさん」と思い出すというわけである。数日前に1切れだけ加熱して食べたが、食品が個別包装で売られる世の中になって、餅がいつでも食べられて気持ちがよい。