毎年これくらいの時期になると、頭から離れなくなるのが平井堅「いとしき日々よ」である。テレビドラマ「JIN -仁- 完結編」の主題歌だった。2011年の初夏のことで、14年前である。
わたしはあのテレビ番組を途中から見はじめてハマってしまい、日曜の晩が楽しみで仕方なかった。あれはいまから思うに、わたしが配信ドラマでない地上波の作品を見るため時間を気にしていた最後の作品ではないだろうか。その後は有料チャンネルや配信サービスの契約を検討しはじめ、テレビの前で時間通りに待つことはほとんどなくなった。
あの最終回、とくに主人公が「揚げ出し豆腐が好きだった人」と記された手紙を読む場面では、ぼろぼろと泣いてしまい呼吸困難になった。すごいものを見たと、ほんとうに思った。流れていた「いとしき日々よ」の歌詞が最終回の内容を意識したものだったと気づき、余計に頭にこびりついた。
——だが、このドラマを忘れられないものにした理由は、実はもうひとつある。翌週の日曜日、すでにボケていた義母がどうにかして電話番号を思い出したのか東京に連絡をよこして、義父が自宅で病死したとわかったのだ。
あのあと、2023年秋に認知症義母が亡くなるまでの12年間で考えたのは「知らせが1週間ずれていたら人生がけっこう変わっていて、ドラマなど見ていられなかっただろう。1週間早くにあの最終回が見られたのは幸運だった。あのあとの暮らしを考えたら、そのあと12年がんばれよというプレゼントを事前にもらったようなものだ」…との思いだ。
そして気づけばいつもこの時期、「いとしき日々よ」を思い浮かべ、そっと口ずさんでいる。あの12年で壊れずに済んだ、生き延びたという、自分たち夫婦への褒美の意味をこめて。