食べ物として菜の花をよくスーパーで買う。八百屋でも買う。辛子マヨネーズで食べるのが好きだ。安く出ているものを見かけると、いそいそと買ってくる。だがある日、近所のスーパーの生花売り場(音は同じだが青果売り場ではない)に、大きな菜の花があった。かなりとまどった。
わたしにとっては、菜の花は食べ物である。花と名が付いているが、ぜったいに食べ物だ。それがまた、花が開ききる前の、見て楽しむというよりは「食べるにはちょっと伸びすぎて固そうな」状態で売られているので、なおのこと戸惑う。花が開ききってしまえば売り物にはならないだろうから、その売り方もしかたないのかもしれないが、わたしにしてみれば、ゆでて食べれば美味しそうな巨大ガニが、普通の熱帯魚の水槽と並んでアクアショップに売られているほどにびっくりする。
たとえば花屋にあって食べることができるものに「菊」があるが、食べる菊として流通しているものは多くの場合は小菊であり、仏花として店頭にあるものとは、微妙に趣が異なる。だからあまり混乱もしないし、ショックを受けることもない。
またあのスーパーで、菜の花を見ることがあるだろうか。少し怖いような気もするが、見てみたい気もする。