ときおり、フルーツかと思うような、味が濃いプチトマトに遭遇する。時代はほんとうに変わった。
こんなとき思い出すのは「昭和のころってトマトに何をかけていた?」というやりとりだ。ネット上でも夏になるとよく出てくる。わたしよりも若い世代や都会に住んでいた人なら「え、マヨネーズじゃないの」と答えるかもしれないが、マヨネーズが家庭で大量に消費されるようになったころには、トマトはけっこう甘くなりかけていた。
かけるのは砂糖という話も聞いたことがあるが、わたしは目の前でソースをかけている人を見たことがある。わたしは野菜を好まない子供時代を送っていたため自分がトマトを食べたかどうかすら覚えていないのだが、ソースをかけている人は、周囲に何人か存在した。
当時はいまのように「とんかつ用だ、中濃だ、ウスターだ」というようなソースの種類はなくて、何にでも使えるようなものがご家庭に1本ずつあり、それをトマトにかけていたと思う。そのころのソースがどれに近いかと言われたら、おそらくは現代の中濃だろうか…いや、焼きそばなど炒め物にたくさん使うことが多かったため、とろみ加減としては、ウスター寄りの中濃だったかもしれない。
スイカも、甘くなった。子供のころは塩をまぶして食べていた。いまのように「1日に塩は何グラムまで」などという話は出まわっておらず、周囲の大人たちは塩気のある食品(漬物など)を食べたほかに、スイカに塩をかけていたものだ。正式な用語ではないのだろうが、当時は「どこそこの誰それさん、中気(ちゅうき)で倒れたって」という話をよく耳にした。中気とは、当時よく使われていた脳卒中の類語である。世の中の多くの人が、塩分過多だったのだろう。
塩分を気にする人は増えたが、その一方で、いろいろなものが甘くなかった。
目の前に昔のトマトと同じものが出されたら、わたしは何をつけて食べるのだろうか。