文庫になったのが1974年と書いてあり、おそらく本編はかなり古い書である。だがほんとうにぐいぐい読ませてくれる。
著者はご家族そろって代々の東京暮らしであり、導入部では100年も前の大正時代に、ご家族から聞いていた話が出てくる。界隈(現在で言えば中央区の銀座)でどんな奇怪な話が聞かれたか、はたまた尾ひれが付く前の実際はこういう話であったはずだなど、又聞きのレベルでは比較的たしかな(又聞き回数の少ない)話をならべる。やがて、ご自身が昭和のころに人から聞いたことなども含めながら、いつのまにか日本の古典である雨月物語から宇治拾遺物語、はたまた源氏物語まで、垣根も感じさせないまま縦横無尽に語り尽くす。
姑にいじめ抜かれて死んだお嫁さんが、死んでから姑のところには怨みを言いに出られないので、生前に窮状を見かねて親切にしてくれた隣家の女性のところに出る。するとその隣家の女性が怒る。なんでうちに来るの、と。死んでからでもやはり姑は怖いのだそうだ。それを聞いて隣家の女性が「親切にしとくんじゃなかった」と不機嫌になる。この導入部に引きつけられた。
源氏物語に見る生き霊の描き方と当時の風俗、また「六条御息所」が夕顔をとり殺したのか、そうではないのか。著者は複数の人の手を経て、最初は「家や場所に憑く霊的なもの」が夕顔を殺したという、当時にしてみれば自然な(?)展開を、のちほどの話で六条御息所が最強の生き霊飛ばしであるかのごとく書き換える傾向があったのではと(源氏物語は書かれていた年数も長いが写本などで多くの人の手を経て現代まで流れきたはずなので)推測している。
AmazonのKindle版で、夏休みということで怪談本が安くなっていたらしいタイムセールで購入した。そのときは360円くらいだったと思う。本日現在は1100円。 「→ Amazon Kindle 版 (アフィリエイト) → 日本の幽霊 (中公文庫) – 池田彌三郎」