中谷美紀がすごい

 WOWOWで、中谷美紀主演のサスペンスドラマ「ギバーテイカー」が放送開始になった。警察ものだと思っていたが最初がホームドラマのような内容で「あれ、犯罪を追う話じゃなかったんだ」と、どこで勘違いしたのかと見ていたら、そこで話がガラッと変わった。

 平和な家庭で、幼い娘が殺害された。殺したのは顔見知りだが、少年ということで世間的には名前も伏せられたまま、本人は医療少年院に送られた。
 それから12年。教師だった母親は警察に転職。するとそこに別れた元夫から、少年が出所したと連絡がはいる。

 かつて娘を殺した男(現在は成人)を許すか許さないか、そういう展開なのかと思っていたら、そこでも予想は裏切られた。男のほうが、自分が手にかけた子供の母を追いはじめるのだ。もともと男を許す気のない母(であり現在は警察官)は、それにどう立ち向かうのか。

 …このプロットだけでもかなりおもしろいのだが、それ以上に、約20年前に中谷美紀が主役を演じて大ヒットしたドラマ
 「ケイゾク」とからめて考えると、ひとりの女優を通じて関連作品を見ているような惑いがあり、それがさらなる趣につながる。

 ケイゾクでは、キャリア組で頭はよいがどこかズレている警察官「柴田純」と、高校生の妹を集団暴行で自殺に追いこんだ主犯格の元少年を執拗に追いつめる警察官「真山徹」が主役。柴田を中谷美紀、真山を渡部篤郎が演じた。真山が追う相手は底知れぬ力を持ち、周囲の人間を扇動したり操ったり、他人と入れ替わったりもしながら、ふたりを翻弄する。

 今回のこの「ギバーテイカー」は、あの「ケイゾク」のころのコミカルさのある柴田淳ではなく、どこまでも相手を追いつめる復讐のかたまりであった真山徹の気持ちを引きずったままの存在として、中谷美紀が20年後にもどってきたような気がしてしまうのだ。もちろんこの作品は作者と原作があると聞いているので、作者がそう意図したのでないかぎりは「ただの偶然」だろうが、わたしのように思い出す人間も多いかと思う。

 それにしても、40代後半と聞いているが、中谷美紀の凜とした美しさには圧倒される。
 あるシーンでは橋の下から上を見上げるだけなのだが、「立っているだけなのにかっこよすぎる」と、ため息が出た。おそらくその感想を狙って撮っているし本人も自覚しているだろうが、立っているだけなのになんだこれはと、驚いた次第である。

 さて、WOWOWオンデマンドでは2話まではいっているようなので、のちほど2話も見てみなくては。