「八つ墓村」が好きすぎて

 1977年の映画「八つ墓村」は横溝正史の原作だが、わたしはこれが好きすぎて、頭の中に頻繁にあのテーマ曲が流れている。自分が階段を降りるとき人数がふたりだったりすると「小竹さんと小梅さん」を思い、懐中電灯を見れば山崎努を思い、鍾乳洞を見ただけで小川真由美が走るシーンを思い浮かべる。着信音も作ってあるのだが、この音楽を設定する相手が見つからずに寝かせてある。

 この作品以外で映像化されたものも、おそらくかなりを見ていると思う。

 30人が短時間に殺害された「津山事件」(当時はまだ津山市ではなかったのだが通称としてそう呼ばれてきた)に触発されて書かれた作品であることは明白だが、この津山事件もまたわたしが好きな題材であり、関連書籍を何冊も読んでいる。近年になってアメリカの大学図書館に資料があるとわかり、複数の人が原典に当たっている。以前に種本とされていた作品には創作部分や誤りがあることもわかって、関連本が出るたびにわくわくしながらチェックする。

 野村芳太郎の「八つ墓村」は、キャストがいい。登場時間はさほど長くないが主人公の母(幼少時に他界)に、中野良子。落ち武者である尼子一族の武将に夏八木勲、加藤嘉、下條正巳もいい味を出している。

 あれは横溝作品が大量に映画化されることになるきっかけ、もしくは出がけの時期の作品であったため、金田一が渥美清なのも新鮮である。
 ラストシーンの市原悦子と、あの音楽がたまらない。