明るい人を見た

 買うとは限らないが安いものを置いている店が散歩ルートにあるため、店頭をときどき見ているし、たまには奥まで見る。今日は女性の店員さんがいて、昨今の事情で袋詰めもなければ客が金を払うだけの時間の接客だというのに、丁寧に話しかけたあげく「お気を付けて。また来てくださいね」と声をかけていた。

 ふり返ってまで見なかったが、足腰の悪い高齢の客だったのかなと、そんな風に感じた。もっとも入店時にはわたしのほかふたりくらいしか店におらず、どちらもそんな高齢者には見えなかったが。

 さほど目新しいものもないので、店を出ようかと思ったそのとき、その女性店員さんのいるすぐ近くに、わたし好みのペットボトル飲料があった。季節ものなので期間がずれるとなかなか買えないものなのだが「以前に別の味が美味だったのだから、これもきっと期待できる」と、2本を手に取って会計へ。

 袋はお持ちですかのあと、2本で140円になります…と言われてわたしが財布で小銭を出すまでのあいだ「これ、美味しそうだなって、思っていたんです」と話がはじまった。「品だししながら、気になって気になって」と。そこでわたしも、普段はそれほど店でしゃべるほうではないのだが「これの別味がすごく美味しかったですよ、これも期待できるかなと思って」と返事をすると、目を輝かせて「ほんとうですか、それはよいことを教えていただきました。帰りに買って帰ります♪」

 そしてそのあとは、先ほどの客と同様に「お気を付けて」と「また来てくださいね」だった。

 ああ、あれを全員にやっているのなら、たいへんだろうに。話し好きなのだろうか。ご本人は疲れないのだろうか。

 長年この界隈で買い物をしてきて、こんな風に話しかけるひとは数名(合計で数回)しか経験がない。もしぜんぶが同じ人だったら、ひとりしかいないことになってしまうが、とにかくそれくらい頻度が低い。

 だが、何やら元気をもらえた気がした。