黙祷をささげた

 午後2時46分。黙祷をささげた。

 10年を過ぎて全国規模での式典がなくなったからか、このところ3月11日に強く心が乱れることはなくなった。10周年のころまでは、テレビやネットのニュースを通じて数日前の段階から心がざわつき、落ちつかなくなっていた。

 震災から半月くらいのあいだは、いつ何があっても家を飛び出せるように、余震の警告音に注意していた。どこかのお宅のホームセキュリティかもしれないが、地震ですという言葉とともにサイレンのような音がよく響いていたし、音だけではなく実際によく揺れた。いつもおびえていた。回数が減ってからも勝手に頭が「鳴っている気がする」、「揺れている気がする」と、落ちつかなかった。

 もう12年と、つい口にしそうになる。だが、まだ12年でもある。

 ご家族を亡くした方々。あるいはふるさと、そして慣れ親しんだ地域を奪われたままの方々の思いは、薄れていくはずもない。